本資料は6月5日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。
フィネレノンとSGLT2阻害薬の同時併用療法が2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者で良好な結果
- 第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEにおいて2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者へのフィネレノンとSGLT2阻害薬の同時併用療法により各単剤療法と比べ尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が有意に低下
- ベネフィットは治療開始後14日目と早期に認められフィネレノンとSGLT2阻害薬の同時併用療法の可能性を支持
- UACRは腎障害の早期指標、CKD進行の重要な予後マーカーで心血管有害事象の予測因子1
ドイツ・ベルリン、2025年6月5日 ― ドイツ・バイエル社は、第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEの結果を本日発表しました。2型糖尿病を合併する成人CKD患者において、フィネレノン(ケレンディアⓇ)とSGLT2阻害薬エンパグリフロジンを同時に開始する併用療法は、いずれかの単剤療法と比べUACRの有意な低下を示しました。本結果は、第62回ERA 2025年年次学術集会で発表されると同時に、医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されました2。
CONFIDENCE試験では2型糖尿病を合併するCKD患者において、フィネレノンとエンパグリフロジンの同時併用療法によりUACRが早期かつ相加的に低下し、180日時点にはべースラインから52%の低下を示しました。同時併用療法ではフィネレノン単剤療法、エンパグリフロジン単剤療法と比べ、ベースラインから180日時点までのUACRの相対低下はそれぞれ29%、32%でした。30%以上のUACR低下は、2剤による同時併用療法から14日以内に認められました。米国糖尿病学会(ADA)は、CKD患者の腎疾患進行抑制のためにUACRの30%低下を推奨しています3。同時併用療法ではおよそ4人中3人の被験者がベースラインに対して30%のUACR低下を示し、30%以上のUACR低下の割合はいずれかの単剤療法より20%高い結果となりました。フィネレノンとSGLT2阻害薬の同時併用療法の安全性プロファイルは、いずれかの単剤療法と同様でした。同時併用療法のベネフィットは、疾病負荷が大きい集団を含め、事前規定された全ての部分集団において見られました。
米国インディアナポリスにあるインディアナ大学医学部、インディアナポリスVAメディカルセンター医学部名誉教授で、本試験運営委員会委員長であるラジブ・アガルワル氏は次のように述べています。「CONFIDENCE試験において、フィネレノンとエンパグリフロジンの同時投与開始は、2型糖尿病を合併するCKD患者においていずれかの単剤療法の結果よりもUACRが有意に低下し、UACRが52%の早期かつ相加的な低下を示したという臨床的エビデンスとなります。UACRが腎アウトカムおよび心血管アウトカムにおいて重要な因子であることを考慮すると、これらは疾患管理を最適化する方法を検討する際に臨床医にとって重要な知見となり、フィネレノンとSGLT2阻害薬の早期併用が患者さんの予後に好影響となることを支持しています」
非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノンは、2型糖尿病を合併するCKD(ステージ1-4)の幅広い患者集団を対象に、2本の第Ⅲ相臨床試験(FIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験、試験完了し公表済み)で、標準治療に上乗せしたフィネレノンとプラセボの腎および心血管アウトカムへの効果が評価されました。SGLT2阻害薬による治療を受けている被験者も2試験の対象でした。FIDELITY(第Ⅲ相臨床試験2本の事前規定された統合解析)のデータより、2型糖尿病を合併するCKD患者における早期アルブミン尿(UACR)の低下が、フィネレノンのCKD進行抑制効果の大部分を仲介することが確認されました。
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門チーフ・メディカル・オフィサーのマイケル・デヴォイは次のように述べています。「CONFIDENCE試験のデータは、2型糖尿病を合併するCKD患者さんのケアを改善するという当社の使命において、重要なマイルストーンです。今回の知見は、フィネレノンとSGLT2阻害薬の積極的な同時併用療法がUACRの早期かつ相加的な低下をもたらし、腎臓および心血管の保護に関連していることを示唆しています。フィネレノンとSGLT2阻害薬の早期併用療法が、世界中の数百万人の患者さんの長期的な予後を改善する可能性を示した、この重要な結果を医師と共有できることをうれしく思います」
糖尿病は公衆衛生上の重大な問題であり、2型糖尿病だけでも世界で推定4億6,200万人が罹患しています4,5。2型糖尿病患者の約40%がCKDを発症しており6、腎機能をより適切に保護し、疾患進行を抑制する治療に対する高いアンメットメディカルニーズがあります。
【CONFIDENCE試験について】
CONFIDENCE(COmbinatioN effect of FInerenone anD EmpaglifloziN in participants with CKD and T2D using an UACR Endpoint)試験は、無作為化、二重盲検、二重ダミー、多施設、3群並行群間比較、第Ⅱ相臨床試験でした。本試験の主要目的は、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、UACR低下に関して、フィネレノンとエンパグリフロジンの同時併用療法がいずれかの単剤療法と比べて優越性があるかどうかを検討することでした。主要評価項目は、併用療法群と各単剤療法群におけるベースラインから180日時点までのUACRの相対変化でした。CONFIDENCE試験では、スクリーニング時の推算糸球体濾過率(eGFR)とUACRにより層別化し、被験者818人を1対1対1の割合で無作為割り付けしました。被験者は、フィネレノン(10または20mgを1日1回)とエンパグリフロジン(10mg)、フィネレノン(10または20mg)とプラセボ、またはエンパグリフロジン(10mg)とプラセボのいずれかを服用しました。
【ケレンディアⓇ/Firialta™(フィネレノン)について】
ケレンディアⓇおよびFirialta™は、フィネレノンの世界的に保護された商標です。フィネレノンは非ステロイド型選択的MRAであり、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に関与します。
フィネレノンは、2型糖尿病を合併する成人CKDの治療薬として、米国、欧州、日本、中国を含む世界90カ国以上で承認されており、ケレンディアⓇ(一部の国ではFirialta™)の名称で販売されています。
フィネレノンの臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、心不全(HF)とCKDをそれぞれ対象とした第Ⅲ相臨床試験10試験で構成されています。MOONRAKERプログラムには、完了した第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFに加え、進行中の研究者主導共同試験であるREDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験およびFINALITY-HF試験が含まれています。一方、CKDのTHUNDERBALLプログラムは、完了した第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEに加え、進行中のFIND-CKD試験、FIONA試験、FIONA-OLE試験、FINE-ONE試験で構成されています。
※フィネレノンの日本における効能・効果は「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析試行中の患者を除く。」です。日本人部分集団では、第Ⅲ相臨床試験FIDERIO-DKDの主要評価項目の複合エンドポイントにおいて、フィネレノンのプラセボに対するハザード比は0.91であった一方で、同試験の主要評価項目の構成要素の腎不全、および第Ⅲ相臨床試験FIGARO-DKDの副次評価項目の腎複合エンドポイントにおいては、フィネレノンのプラセボに対するハザード比が1を上回りました。試験の対象となった全体集団と比べて日本人ではフィネレノンの腎不全への進展抑制効果が弱い可能性があります。
References:
1. National Kidney Foundation. Urine albumin-creatinine ratio (uACR). https://www.kidney.org/kidney-topics/urine-albumin-creatinine-ratio-uacr. Last accessed: May 2025.
2. Agarwal R, et al. N Engl J Med. 2025, Jun 5 doi: 10.1056/NEJMoa2410659. Online ahead of print
3. Draznin B, et al. Diabetes Care. 2022;45:S175–S184.
4. GBD 2021 Diabetes Collaborators. Lancet. 2023 Jul 15;402(10397):203-234
5. Khan MAB, et al. J Epidemiol Glob Health. 2020 Mar;10(1):107–111
6. International Diabetes Federation. 2020. Available at: https://idf.org/europe/life-with-diabetes/diabetes-related-complications/chronic-kidney-disease/. Last accessed: May 2025.
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは循環器領域のリーダーであり、革新的な治療薬のポートフォリオを推進しています。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメットメディカルニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて取り組んでいます。バイエルのポートフォリオを精密心臓病学(precision cardiology)へと転換させて高い疾病負担に対処し、長期的な成長を促進することにより、将来の循環器領域市場の大きな可能性を引き出すことを戦略としています。バイエルのポートフォリオには、革新的な製品や前臨床および臨床開発のさまざまな段階にある化合物がすでにいくつかあります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。2024年のグループ全体の売上高は466億ユーロ、従業員数は約93,000名、研究開発費は62億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2025年6月6日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
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