- 推算糸球体濾過量(eGFR)スロープを改善させ慢性腎臓病(CKD)の進行を抑制
- 臨床的に管理可能な安全性プロファイルを示す
バイエル薬品 非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬「ケレンディア®」のアジア人集団における有効性・安全性解析結果を発表
大阪、2025年4月8日 ― バイエル薬品株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:イン・チェン、以下「バイエル薬品」)は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)「ケレンディア®」(一般名:フィネレノン)の事前規定された統合解析FIDELITYにおいて、日本人を含むアジア人集団を対象とする新たなサブグループ解析(事後解析)の結果、フィネレノン群はプラセボ群と比べ、腎障害の指標を改善させCKDの進行を抑制するとともに、臨床的に管理可能な安全性プロファイルを示したことをお知らせします。本結果は、4月7~10日にタイ・バンコクで開催中のIDF2025で発表されました。
フィネレノンは、2型糖尿病を合併するCKD患者計13,000人以上が参加した2つの大規模臨床試験(FIGARO-DKD1、FIDELIO-DKD2)のデータに基づき、2型糖尿病を合併するCKDの適応で承認されました。FIDELITYはこれら2試験の事前規定された統合解析です3。アジア人集団(10カ国・地域、解析対象2,858人)を対象としたFIDELITYの新たなサブグループ解析では、フィネレノンの有効性に関して、CKDの進行速度を示す指標であるeGFRスロープ(eGFRの年間変化率)の低下、腎障害の指標の一つである尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)のベースラインから4カ月目までの変化、UACR値の退縮(regression)、および安全性を評価しました。
今回の解析の結果、eGFRスロープ(4カ月目から投与中止または試験終了まで)は、フィネレノン群においてプラセボ群と比べ改善し(フィネレノン群:-2.598ml/分/1.73m2、プラセボ群:-3.673ml/分/1.73m2、群間差1.08ml/分/1.73m2[95%CI 0.53–1.63])、この改善はベースラインのUACR値にかかわらず見られました。UACR値は、フィネレノン群において、ベースラインから4カ月目までに幾何平均で34%減少しました(ベースライン:526.17mg/g、4カ月目:345.03mg/g)。UACR値の減少や退縮は、ベースラインのeGFR値、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の使用有無にかかわらず認められました。また、「微量アルブミン尿」(UACR 30mg/g以上300mg/g未満)から「正常アルブミン尿」(UACR 30mg/g未満)への退縮は、フィネレノン群が39.5%、プラセボ群が14.8%でした(HR=3.04;95%CI 2.21-4.18)。
安全性の解析(解析対象2,854人)では、治験薬投与下で発現した有害事象の発現頻度は、ベースラインのeGFR値にかかわらず両群で同程度でした。ベースラインのeGFR値が低い集団(60ml/分/1.73m2未満)では高い集団(60ml/分/1.73m2以上)と比べ、高カリウム血症(フィネレノン群:eGFR低値集団23.2%、eGFR高値集団14.7%、プラセボ群:14.7%、9.6%)、急性腎障害(同:2.5%、1.4%、同:3.6%、2.7%)ともに多く見られましたが、入院(高カリウム血症1.5%以下、急性腎障害1.5%以下)や投与中止(1.8%以下、0.2%以下)に至った頻度は両群ともにいずれも低値で、安全性プロファイルは全体として臨床的に管理可能と考えられました。
福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学教授の川浪大治先生は、本解析について次のように述べています。「今回の解析結果より、日本人を含むアジア人集団において、CKDの進行速度を示す指標chronic eGFR slopeやUACRをフィネレノンが改善させること、UACRの改善はベースラインの腎機能や併用薬の影響を受けないこと、フィネレノンの安全性プロファイルは管理可能であることが示唆されました。2型糖尿病を合併するCKDは腎臓だけでなく心血管イベントのリスクも高く、疾病負荷の高い病態です。今回の解析結果から得られた知見が日常臨床の参考になることを願っています」
【ケレンディア®(フィネレノン)について】
ケレンディア®(一般名:フィネレノン)は、ドイツ・バイエル社が創製した1日1回経口投与の非ステロイド型選択的MRAです。ケレンディア®は、ミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に関与します。
ケレンディア®は日本において、2つの第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKD、FIGARO-DKDの結果に基づき、厚生労働省より「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。」を効能・効果として2022年3月に承認され、同6月よりバイエル薬品が販売しています。ケレンディア®はCKDの治療薬として米国、欧州など90カ国以上で承認されています。また、心不全(HF)の治療薬として日本のほか、米国、中国、欧州でも承認申請中です。HFの治療薬として承認されている国・地域はありません。
ケレンディア®の臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、CKDとHFをそれぞれ対象とした第Ⅲ相臨床試験10試験で構成されています。CKDのTHUNDERBALLプログラムは、完了したFIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験に加え、進行中のFIND-CKD試験、FIONA試験、FIONA-OLE試験、FINE-ONE試験、および第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEで構成されています。一方、HFのMOONRAKERプログラムには、FINEARTS-HF試験に加え、進行中の研究者主導共同試験であるREDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験およびFINALITY-HF試験が含まれています。
【2型糖尿病を合併するCKDについて】
日本には約2,000万人(成人5人に1人)のCKD患者がいると推定されています4。CKDは死に至る危険がありますが、あまり認識されていません。CKDは、糖尿病に起因する最も多い合併症の一つであり、心血管疾患の独立した危険因子でもあります。2型糖尿病患者の最大40%がCKDを発症します5。ガイドラインに基づく治療にもかかわらず、2型糖尿病を合併するCKD患者は、CKDの進行および心血管イベント発現のリスクが依然として高いままです。2型糖尿病を合併するCKDは、生存のために透析または腎移植を必要とする末期腎不全の主な原因です。2型糖尿病を合併するCKD患者は、2型糖尿病のみの患者さんよりも心血管系疾患で亡くなる可能性が3倍高くなります6。
References:
1. Pitt B, et al. N Engl J Med. 2021 Dec 9;385(24):2252-2263.
2. Bakris GL, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 3;383(23):2219-2229.
3. Agarwal R, et al. Eur Heart J. 2022 Feb 10;43(6):474-484.
4. 日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」
5. Wu B, et al. BMJ Open Diabetes Res Care 2016;4:e000154.
6. Afkarian M, et al. J Am Soc Nephrol. 2013;24(2):302-308
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、Science for a better lifeをお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメットメディカルニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。2024年のグループ全体の売上高は466億ユーロ、従業員数は約93,000名、研究開発費は62億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社について
医療用医薬品、コンシューマーヘルスの各事業を通じて、日本の患者さんのための治療に変革をもたらす持続可能な取り組みを推進しています。医療用医薬品部門では、循環器・腎・代謝領域、オンコロジー領域、眼科領域、婦人科領域、血液領域、画像診断領域に、コンシューマーヘルス部門では、赤ちゃんの「人生最初の1000日」に適切な栄養を届けるため、女性の妊娠準備と妊娠期間を支援するサプリメントなどに注力しています。詳細はwww.pharma.bayer.jp, Facebook, YouTubeをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2025年4月8日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements) が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。