本資料は9月10日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。

欧州糖尿病学会(EASD)2024年年次学術集会で最新データが発表

FINEARTS-HF試験の新たなサブグループ解析でフィネレノンを投与された左室駆出率40%以上の心不全患者における糖尿病の新規発症リスク低下が明らかに

  • FINEARTS-HF試験でフィネレノンを投与された左室駆出率(LVEF)40%以上の心不全(HF)患者はプラセボと比較して糖尿病の新規発症リスクが24%低下
  • フィネレノンによる糖尿病の新規発症リスク低下はサブグループ間で一貫し糖尿病の異なる分類においても同様
  • FINEARTS-HF試験の事前規定された解析ではベースライン時点の血糖値にかかわらずフィネレノンがプラセボと比較して心血管死およびHF増悪イベントの複合リスクも低下
  • HF患者は糖尿病の発症リスクが高く糖尿病は症状の悪化、入院率上昇、死亡率上昇と関連

ドイツ・ベルリン、2024年9月10日 ― ドイツ・バイエル社は、LVEF 40%以上のHF患者にフィネレノン(ケレンディア/Firialta)を投与した場合、プラセボと比較して糖尿病の新規発症リスクが24%低下したという新たなデータを本日発表しました。本データは、約6,000人のHF患者を無作為割り付けした第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFの事前規定された解析の結果で、フィネレノンはプラセボと比較して、心血管死およびHF増悪イベントの複合リスクを低下させることが示されました。事前規定された新たな解析結果は本日、欧州糖尿病学会(EASD)2024年年次学術集会で発表されました。

 

グラスゴーにあるクイーンエリザベス大学病院循環器内科教授で名誉循環器専門医のジョン・マクマレー氏は次のように述べています。「HFと糖尿病は明らかに有害な関係があり、患者さんの症状や転帰に甚大で有害な影響を及ぼしています。願わくは、糖尿病の新規発症が低下することにより、HF患者さんのQOLが改善し、その後の入院や死亡のリスクが低下することを期待したいと思います」

 

HFは人生を変え、衰弱させる疾患であり、しばしば苦痛を伴う症状や日常生活の遂行能力の低下をもたらします。HF患者は糖尿病の発症リスクが高くなります。HF患者が糖尿病を発症すると、糖尿病のないHF患者と比較して、症状やQOLの悪化、腎機能の急速な低下、入院、死亡のリスクが高くなります。

 

FINEARTS-HF試験では、追跡期間32カ月間(中央値)に262人(8.1%)が糖尿病を新規発症し、内訳はフィネレノン群115人(7.2%)、プラセボ群147例(9.1%)でした。フィネレノン群では、プラセボ群と比較して糖尿病の新規発症リスクが24%有意に低下しました(HR 0.76[95%CI、0.59-0.97])。フィネレノンの効果は、HbA1c値や血糖降下療法の開始有無にかかわらず、糖尿病の異なる分類においても同様でした。フィネレノンの効果はまた、主要な患者サブグループにおいても一貫していました。さらに、糖尿病の新規発症は、心血管死、全HF増悪イベント、および全死亡の高いリスクと関連しており、これらの関連は、他の予後変数で調整した後も変わりませんでした。

 

ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門研究開発責任者のクリスチャン・ロンメルは次のように述べています。「心血管や腎臓と代謝疾患の関係は理解が深まりつつありますが、明らかにすべきことはまだまだあります。FINEARTS-HF試験のデータに基づき、糖尿病の新規発症に対するフィネレノンの新たなベネフィットが示されたことをうれしく思います。本データは、一般的ではあるものの治療選択肢が限られているLVEF 40%以上のHF患者さんにおけるフィネレノンの重要な知見です」

 

FINEARTS-HF試験の事前規定された解析では、主要複合評価項目である心血管死および全HF増悪イベントに関し、糖尿病の既往歴、ベースライン時点の血糖値およびHbA1c値、追跡期間中のHbA1c値に応じて、フィネレノン群の有効性と安全性がプラセボ群と比較検討されました。新たな解析では、フィネレノン群はプラセボ群と比較して、糖尿病の既往歴、ベースライン時点の血糖値やHbA1c値、追跡期間中のHbA1c値にかかわらず、心血管死および全HF増悪イベントのリスクが一貫して低下することが示されました。

 

また、EASDでは本日、統合解析FINE-HEARTの事前規定された解析から得られた最新データも発表されました。2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)、またはLVEFが軽度低下または保たれたHF患者において、ベースライン時点のHbA1c値や血糖降下療法、またナトリウム・グルコース共役輸送体2(SGLT2)阻害薬やグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬との併用有無にかかわらず、フィネレノンは罹患率および死亡率の低下に有効であることが示されました。

【ケレンディア/Firialta(フィネレノン)について】

ケレンディアおよびFirialtaは、フィネレノンの世界的に保護された商標です。フィネレノンは非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬であり、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に関与します。

 

フィネレノンは、ケレンディア(一部の国ではFirialta)の名称で販売されています。2型糖尿病を合併するCKDの治療薬として、中国、欧州、日本、米国を含む世界90カ国以上で承認されています。

 

フィネレノンの臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、HFとCKDをそれぞれ対象とした第Ⅲ相臨床試験10試験で構成されています。MOONRAKERプログラムには、FINEARTS-HF試験に加え、進行中の研究者主導共同試験であるREDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験およびFINALITY-HF試験が含まれています。一方、CKDのTHUNDERBALLプログラムは、完了したFIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験に加え、進行中のFIND-CKD試験、FIONA試験、FIONA-OLE試験、FINE-ONE試験および第Ⅱ相臨床試験のCONFIDENCE試験で構成されています。

【FINEARTS-HF試験について】

FINEARTS-HF試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、イベント主導型の第Ⅲ相臨床試験です。過去12カ月以内に何らかの検査法によりLVEF 40%以上と確認され、無作為割り付け前の少なくとも30日間、利尿薬を投与されている症候性HF患者(ニューヨーク心臓協会[NYHA]心機能分類Ⅱ~Ⅳ度)を対象に、心血管死およびHFイベントの抑制に対するフィネレノン(ケレンディア)の有効性と安全性を検討しました。FINEARTS-HF試験の主要評価項目は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)からなる複合評価項目でした。

 

世界37カ国、630カ所以上の施設より約6,000人の被験者が無作為割り付けされ、フィネレノンまたはプラセボが1日1回投与されました。また、本試験の被験者は、症状および併存疾患の治療のために標準治療を受けました。

 

フィネレノンの1日1回投与は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)の複合リスクを32カ月間(中央値)にわたり、16%有意に減少させました(相対リスク減少、率比[RR]0.84[95%CI、0.74-0.95;p=0.0072])。

 

バイエル社は今後、FINEARTS-HF試験の成績に基づき、フィネレノンの承認申請を規制当局に提出する予定です。

 

FINEARTS-HF試験を含む、フィネレノンを用いた現在進行中のMOONRAKER臨床試験プログラムは、15,000人以上の被験者を対象とするこれまでで最大規模のHF試験プログラムの一つです。幅広い層の被験者および臨床背景のHFにおけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目的としています。

【HFについて】

HFは複雑な臨床症候群であり、体内の血液および酸素需要に見合った十分な血液を心臓に満たし、送り出すための心臓のポンプ機能が徐々に低下することが特徴です。世界中で6,000万人以上がHFに罹患しており、65歳以上の入院の主要因となっています1,2。高齢化の影響もあり、HFの患者数は今後10年間で大幅に増加すると予測されています3,4,5

 

HF患者は予後不良であり、その死亡率は最も一般的ながんと同程度かそれ以上です6。HFには複数の併存疾患が組み合わさることがあり、HF患者の半数以上が肥満、CKD、糖尿病、高血圧、心房細動などを有しています7

References:
1. World Heart Federation. About Heart Failure. Available at: https://world-heart-federation.org/cvd-roadmaps/whf-global-roadmaps/heart-failure/ Last accessed: July 2024
2. Mamas MA, et al. EHJ. 2017 Sep;19(9):1095-1104
3. Savarese G, et al. Cardiac Failure Review. 2017; Apr;3(1):7-11.
4. National Health Service. Heart Failure. Available at https://www.nhs.uk/conditions/heart-failure/ Last Access July 2024
5. Nedkoff L, Weber C. Heart. 2022 Feb 1;108(4):249-250
6. Virani SS et al. Circulation. 2021;23:143(8):e254-743
7. Khan, M.S., et al. Eur J Heart Fail, 2020;22:1032-1042

循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて

バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、Science for a better lifeをお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメットメディカルニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。

バイエルについて

バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。2023年のグループ全体の売上高は476億ユーロ、従業員数は約100,000名、特別項目計上前の研究開発費は58億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。

バイエル薬品株式会社
2024年9月20日、大阪

将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)

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