fermata株式会社 CCO 中村 寛子 さん

第2回:キャリア形成で重要なのは、自分の身体を知ること
生理痛や女性特有の様々な体調不良があっても仕事が休めないとき、周囲とのコミュニケーションで意識していることはありますか?

基本的には体調の悪い理由が生理であれ、他の理由であれ、「体調が悪い」と相手に伝えるようにしています。ただ、私個人的には、その理由について詳しく、「生理です」ということまでは伝えません。大切なのは、その情報を受け取る相手の立場や心情も考えた上で自分の状況を伝えることだと思っています。もちろん、きちんと細かい理由まで伝えたい人は、伝えてもいいと思います。

もし、相手に「こうしてほしいな」という意図がある場合には、伝えてみるのもひとつの方法です。一方で、相手によっては伝えないほうが上手くいくというケースもあります。その場合は、「すこし体調が悪いので......」というように簡単に伝えるとよいかもしれません。

 

女性が生理痛や女性特有の体調変化の悩みを抱えながらキャリア形成をしていくためには、何が必要でしょうか?

第2回:キャリア形成で重要なのは、自分の身体を知ること

重要なのは、自分の身体を知ることだと思います。ただ、そうは言っても自分の身体を知ることは簡単なようでいちばん難しいですよね。ここにキャリア形成という視点を加えると、個人差はありますが20代ならある程度の無理が利くでしょう。しかし、生理や女性特有の体調変化は前述のとおり、色々と形を変えながら付きまとってくるもの。

 

そしてキャリアを考えるタイミングは人それぞれで転職活動や結婚、出産など大きなライフスタイルの変化を伴うこともあるでしょう。また、がむしゃらに働きたいというひともいれば、自分の身体を労わりながら体調に合わせた仕事やその量を決めたいというひともいます。

 

大切なのは、自分の身体について知った上で、自分がどうなりたいのかを見つめ直すことではないでしょうか。全員が全員、同じスピードで走る必要はないんです。自分の身体ときちんと向き合うことができれば、なりたい自分とキャリアが自然と紐づいてくるのではと思います。そう考えると身体の変化はある意味、キャリアを見直すきっかけとも言えるのかもしれません。

経営者の立場から、スタッフに対して女性特有の悩みや健康管理について配慮されていることはありますか?

そうですね、何気なく始めたコミュニケーションがこれに当てはまるかもしれません。私たちは皆、出社時に自分たちの体調や気持ちについて“お天気マーク”を社内チャットに投稿しています。たとえば、生理痛がつらいときや風邪気味のとき、業務が立て込んでいる時は“雨マーク”を、体調がよくて晴々とした気持ちでやる気がみなぎっているときには“晴れマーク”という感じです。

最初は雨と曇りと太陽の3つしかありませんでしたが、少しずつバリエーションが増えてきています。たとえば、雨に雷が追加されているようなマークをあげていたら、周囲が仕事を依頼するタイミングを配慮することも。ただし、このマークをあげた理由について本人は詳しく体調を説明する必要はありません。
お互いが尊重しあえるような環境づくりは、このような小さなコミュニケーションからも生まれるものと思って続けています。

 

女性が様々なライフステージを乗り越えていくための、コツはありますか?

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仕事もそうですが色々なことが起こる中で、私のよく実行していることが2つあります。
ひとつ目は自分の中で当たり前だと思っているものに対して、もう一回、問いを立ててみるということ。たとえば生理痛がつらいときに痛み止めを飲むことに対して、「これって当たり前かな?」と自分に聞いてみます。もしかしたら、私が留学先で知った低用量ピルという選択肢があるように、ほかの手段や選択肢が新たに見つかったり、受診先の病院で教えてもらったりするかもしれません。


2つ目は、モヤモヤすることに対して疑問を持つ姿勢が大事だと考えること。私の場合、低用量ピルの処方先となる医療機関をいくつか渡り歩きました。その理由は、医師との相性を含め、やはり自分自身で納得感を得たかったからだと思います。

人によっては処方さえ受けられればいいというひとと、私のようにヒアリングを受けながら寄り添ってもらいたいと思うひともいるでしょう。モヤモヤしながら通院するよりも、“もっと自分にあった病院があるのでは?”というような疑問を持っていくつかの病院を受診しました。そして最終的に自宅からすこし離れた場所にある病院で、しっかりと寄り添ってくれる医師を見つけたのです。

 

女性が自分らしく働き続けるために大切だと思われることを教えてください。

例えば“ロールモデル”という言葉を使うことがあるかと思いますが、その場合多くのひとは、目標にする特定の人物を想像するかもしれません。しかし、もっと柔軟に自分でデザインするロールモデルというのがあってもいいと思いませんか?仕事と自分の時間のバランスや、キャリアの重ね方など、色々なひとの働き方をうまく組み合わせながら、ひとそれぞれにデザインされたオリジナルのロールモデルがあっていいと思います。

また、体調が悪くても頑張りすぎてしまうひとには、もっと自分の身体に耳を傾けてほしいですね。自分の身体を知ることが、自分のロールモデルを考える上でも大切なことと捉えてみてはいかがでしょうか?

最後に、女性が長く健康的に働き続けられるために、日本社会がもつ課題や社会に対する期待についてお聞かせください。

第2回:キャリア形成で重要なのは、自分の身体を知ること

個人的には最終的に、フェムテックが当たり前のものとなり、フェムテックという言葉がいらない世の中になってほしいと思っています。これには、ひとり一人が自分の身体に対するオーナーシップを持てるような社会となる必要があるでしょう。

ここ2~3年ではいい意味で、今までタブー視されていた生理をはじめとする性に関する社会の動きは大きく変わってきたと思います。

そしてこの先にある新たな課題が「コミュニケーション」だと考えています。自分の身体を知ることが出来、対処法を理解したら、次のステップがこのコミュニケーション。例えば生理の話題ひとつ取っても、オープンに話したい方もいれば、傾聴する姿勢で学びの場が欲しいと思われる方もいらっしゃいますよね。会社という場面を切り取っても、上司に生理痛でつらいということを話す必要はあるのか、上司も部下に対してどの様なコミュニケーションを取るべきなのかといったことも課題として出てくるでしょう。これは当人だけが考えるべきものではなく、すべての社会的環境において取り組む必要のあるものだと思っています。

働く女性はもちろんのこと、社会の中で生きるすべての方々がここちよく暮らしていけるようになるためには、偏ったジャッジ(判断)をするのではなく、お互いを許容し合える環境をつくっていくことが求められているのではないでしょうか。

そして繰り返しにはなりますが、この記事を読んでいただいている皆さんには、まずはそのはじめの一歩として、“自分の身体を知る”ということを前向きに捉えて行動してもらいたいです。私も、皆さんの気付きに繋がるような場所や機会を今後も増やしていきたいと思います。

fermata株式会社

2019年の創業以来、「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」をビジョンに掲げ、未だタブー視される傾向にある女性のウェルネス課題を解決・支援する事業を行っている。
2022年10月には国内最大級のフェムテック展示イベント「Femtech Fes! 2022」を開催し、2900人が来場。

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