フィネレノンの左室駆出率40%以上の心不全患者に対する新適応を米国食品医薬品局が承認
- 循環器・腎・代謝領域
本資料は7月14日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。
- フィネレノン(ケレンディアⓇ)は左室駆出率(LVEF)40%以上(LVEFの軽度低下または保たれた心不全[HF])の成人HF患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験で統計学的に有意で臨床的に意味のある心血管ベネフィットを示したミネラルコルチコイド受容体(MR)を標的とする初めての薬剤
- 米国のLVEF 40%以上のHF患者は約370万人で年間50万人以上が入院1
- LVEF 40%以上のHFに対して承認されガイドラインに基づく治療法はこれまで限られておりHFによる入院や死亡率は依然として高い
- 新適応は米国食品医薬品局(FDA)の優先審査品目に指定され、HFを対象としたこれまでで最大規模の第Ⅲ相臨床試験プログラムの一つであるMOONRAKERプログラムを構成するFINEARTS-HF試験のデータに基づき承認
ドイツ・ベルリン、2025年7月14日 ― ドイツ・バイエル社は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノン(ケレンディアⓇ)が、LVEF 40%以上の成人HF患者の治療薬として米国FDAに承認されたことを本日発表しました。フィネレノン(10mg、20mg、40mg)の新しい適応は、LVEF 40%以上の成人HF患者における心血管死、HFによる入院または緊急受診のリスク減少です。
FDAは、LVEF 40%以上の成人HF患者を対象としたフィネレノンの適応追加申請について、3月に優先審査品目に指定しました。FDAによるフィネレノンの本承認は、2024年欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表され、医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに同時掲載された第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFのデータに基づいています。FINEARTS-HF試験においてフィネレノンは、主要複合評価項目である心血管死およびすべて(初発および再発)のHFイベント(HFによる入院または緊急受診)に関し、統計学的に有意で、臨床的に意味のある減少を示しました。これらのベネフィットは、基礎治療、併存疾患、入院状況にかかわらず示されました。現在進行中のMOONRAKERプログラムは15,000人以上を対象とするHFにおいてこれまでで最大規模の第Ⅲ相臨床試験プログラムで、幅広い患者層と臨床背景におけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目的としています。FINEARTS-HF試験はMOONRAKERプログラムの一つです。
ハーバード大学医学部教授、マス・ジェネラル・ブリガム臨床試験アウトカムセンター長、FINEARTS-HF試験運営委員会委員長のスコット・D・ソロモン氏は次のように述べています。「FDAによるフィネレノンの承認は、予後不良であり、患者数が増加傾向にあるLVEF 40%以上のHF患者に対する治療の選択肢を広げます。FINEARTS-HF試験で示された有効性に基づき、フィネレノンは包括的なケアの新たな柱となり、臨床転帰を改善することで、依然として高いアンメットメディカルニーズを抱える米国の患者さんに新たな希望をもたらします」
今回のFDA承認によりケレンディアⓇは、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)、およびLVEF 40%以上のHFを適応として米国で承認された唯一の非ステロイド型MRAとなります。フィネレノンは非ステロイド型選択的MRAであり、LVEF 40%以上のHF患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(FINEARTS-HF)で心血管ベネフィットを示したMR経路を標的とする初めての薬剤です。フィネレノンは、MRおよびレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰活性化を標的とすることにより、血行動態因子や炎症・線維化プロセスなど、LVEF 40%以上のHFの主要な要因に対処します。
ドイツ・バイエル社エグゼクティブバイスプレジデント グローバル製品戦略&コマ―シャリゼーション責任者のクリスティーン・ロスは次のように述べています。「循環器領域において革新的な科学を提供するというバイエルの長年の専門性に基づき本日、LVEF 40%以上のHFに対してフィネレノンが承認されたことは、この疾患を持つ患者さんの生活を改善するという当社のコミットメントにおいて、重要なマイルストーンです。高血圧や心房細動など複数の合併症を併せ持つことが多い中、こうした複雑な患者さんに対してエビデンスのある治療選択肢が限られていることに医師は直面していました。フィネレノンはFINEARTS-HF試験において、LVEF 40%以上のHF患者の心血管イベントの発現を抑制しました。われわれは、患者さんの非常に大きなニーズの解決に貢献できる基礎治療薬としてのフィネレノンの可能性に期待しています」
約370万人の米国人がLVEF 40%以上のHFであり、年間50万人以上が入院しています。多くは糖尿病、高血圧、肥満、CKDなどの複数の併存疾患を抱えており入院率が高いため、死亡リスクが高まり、医療制度に大きな負担をかけています。LVEF 40%以上のHF患者のうち、25%が退院後1年以内にHFのために再入院し2、5年死亡率は75%となっています1。
フィネレノンは現在、LVEF 40%以上のHF治療薬として米国以外では承認されていません。フィネレノンは、中国、EU、日本においてLVEF 40%以上の心不全治療薬として承認申請中であり、現在審査中です。世界のほかの市場でも審査当局に承認申請中、または今後、承認申請する予定です。
ケレンディアⓇ(フィネレノン10mg、20mg)は米国において2021年以降、2型糖尿病を合併する成人CKD患者における持続的な推算糸球体濾過量(eGFR)低下、末期腎不全、心血管死、非致死的心筋梗塞、HFによる入院のリスクを減少させる治療薬として承認されています。フィネレノンは、FIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験のデータに基づき、2型糖尿病を合併する成人CKD患者の治療薬として、米国、欧州、日本、中国を含む世界95カ国以上で承認されています。2型糖尿病を合併するCKD患者の腎臓・心血管アウトカムを改善する治療の柱として、複数の国際的なガイドラインで推奨されています。
【FINEARTS-HF試験について】
FINEARTS-HF試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、イベント主導型の第Ⅲ相臨床試験です。過去12カ月以内に何らかの検査法によりLVEF 40%以上と確認され、無作為割り付け前の少なくとも30日間、利尿薬を投与されている症候性HF患者(ニューヨーク心臓協会[NYHA]心機能分類Ⅱ~Ⅳ度)を対象に、心血管死およびHFイベントの抑制に対するフィネレノン(ケレンディアⓇ)の有効性と安全性を検討しました。FINEARTS-HF試験の主要評価項目は、心血管死およびすべて(初発および再発)のHFイベント(HFによる入院または緊急受診)からなる複合評価項目でした。
世界37カ国、630カ所以上の施設より約6,000人の被験者が無作為割り付けされ、フィネレノンまたはプラセボが1日1回投与されました。また、本試験の被験者は、症状および併存疾患の治療のために標準治療を受けました。
FINEARTS-HF試験を含む、フィネレノンを用いた現在進行中の臨床試験プログラムMOONRAKERは、15,000人以上の被験者を対象とするこれまでで最大規模のHF試験プログラムの一つです。幅広い層の被験者および臨床背景のHFにおけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目的としています。
【ケレンディアⓇ/Firialta™(フィネレノン)について】
ケレンディアⓇおよびFirialta™は、フィネレノンの世界的に保護された商標です。フィネレノンは非ステロイド型選択的MRAであり、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に関与します。
フィネレノンは、2型糖尿病を合併する成人CKDの治療薬として、米国、欧州、日本、中国を含む世界95カ国以上で承認されており、ケレンディアⓇ(一部の国ではFirialta™)の名称で販売されています。フィネレノンは米国において、LVEF 40%以上のHF治療薬としてケレンディアⓇの名称で承認されています。
フィネレノンの臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、HFとCKDをそれぞれ対象とした第Ⅲ相臨床試験10試験で構成されています。MOONRAKERプログラムには、完了した第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFに加え、進行中の研究者主導共同試験であるREDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験およびFINALITY-HF試験が含まれています。一方、CKDのTHUNDERBALLプログラムは、完了した第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、完了した第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEに加え、進行中のFIND-CKD試験、FIONA試験、FIONA-OLE試験、FINE-ONE試験で構成されています。
【HFについて】
HFは複雑な臨床症候群であり、体内の血液および酸素需要に見合った十分な血液を心臓に満たし、送り出すための心臓のポンプ機能が徐々に低下することが特徴です。世界中で6,000万人以上がHFに罹患しており、65歳以上の入院の主要因となっています3,4。高齢化の影響もあり、HFの患者数は今後10年間で大幅に増加すると予測されています5,6,7。HF患者は予後不良であり、その死亡率は最も一般的ながんと同程度かそれ以上です8。HFには複数の併存疾患が組み合わさることがあり、HF患者の半数以上が肥満、CKD、糖尿病、高血圧、心房細動などを有しています9。HFの症状には、めまい、息切れ、疲労、睡眠障害、胸部不快感、浮腫(下肢の腫れ)、慢性的な咳や喘鳴などが挙げられます。
HFの危険因子には、高血圧、糖尿病、喫煙、心筋梗塞の既往、冠動脈疾患などがあります。治療の進歩にもかかわらず、HFと診断された人の約30%が1年以内に亡くなり、5年後には約40%に増加します8。
LVEF(左室が収縮するたびにどれくらいの血液を送り出すかを示す心機能の指標)により分類すると、HFは以下3つの異なるカテゴリーに分けられます:
- LVEFの低下したHF(HFrEF)は、収縮期に酸素を豊富に含む血液を十分に送り出す心臓のポンプ機能が低下していることが特徴で、LVEFは40%以下です。
- LVEFの軽度低下したHF(HFmrEF)は、LVEFが41~49%で、心臓のポンプ機能に何らかの障害がある患者さんのカテゴリーです。
- LVEFの保たれたHF(HFpEF)は心臓の硬化が特徴で、左心室が血液で満たされて十分に拡張できないため充満異常を来しており、LVEFは50%以上です。
LVEF 40%以下、LVEF 40%以上がそれぞれHF症例の約半数を占めますが、LVEF 40%以上のHF患者では、心血管疾患および心血管疾患以外の併存疾患の負担がより大きくなります。疫学データの傾向より、LVEF 40%以上のHF患者が、HFで入院する患者の大部分を占めるようになる日が近いことが示唆されています。LVEF 40%以下のHFでは治療が進歩していますが、LVEF 40%以上のHFではガイドラインに基づく治療選択肢が限られています。
※フィネレノンの日本における効能・効果は「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析試行中の患者を除く。」です。日本人部分集団では、第Ⅲ相臨床試験FIDERIO-DKDの主要評価項目の複合エンドポイントにおいて、フィネレノンのプラセボに対するハザード比は0.91であった一方で、同試験の主要評価項目の構成要素の腎不全、および第Ⅲ相臨床試験FIGARO-DKDの副次評価項目の腎複合エンドポイントにおいては、フィネレノンのプラセボに対するハザード比が1を上回りました。試験の対象となった全体集団と比べて日本人ではフィネレノンの腎不全への進展抑制効果が弱い可能性があります。
References:
1. Bozkurt B. J Card Fail. 2025;(31):66-116. doi:10.1016/j.cardfail.2024.07.001
2. Cheng RK, et al. Am Heart J. 2014;168(5):721-730. doi:10.1016/j.ahj.2014.07.008.
3. World Heart Federation. About Heart Failure. Available at: https://world-heart-federation.org/cvd-roadmaps/whf-global-roadmaps/heart-failure/ Last accessed: July 2024
4. Mamas MA, et al. EHJ. 2017 Sep;19(9):1095-1104
5. Savarese G, et al. Cardiac Failure Review. 2017; Apr;3(1):7-11.
6. National Health Service. Heart Failure. Available at https://www.nhs.uk/conditions/heart-failure/ Last Access July 2024
7. Nedkoff L, Weber C. Heart. 2022 Feb 1;108(4):249-250
8. Virani SS et al. Circulation. 2021;23:143(8):e254-743
9. Khan, M.S., et al. Eur J Heart Fail, 2020;22:1032-1042
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは循環器領域のリーダーであり、革新的な治療薬のポートフォリオを推進しています。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメットメディカルニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて取り組んでいます。バイエルのポートフォリオを心臓病に対する精密医療へと転換させ、循環器疾患による大きな負担に対処して長期的な成長を促進することにより、今後の循環器市場における未来を切り開くことを戦略としています。バイエルのポートフォリオには、革新的な製品や前臨床および臨床開発のさまざまな段階にある複数の化合物がすでに含まれています。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。2024年のグループ全体の売上高は466億ユーロ、従業員数は約93,000名、研究開発費は62億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2025年7月23日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements) が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。