閉塞性肥大型心筋症を対象とした心筋ミオシン阻害剤aficamtenの第Ⅲ相臨床試験MAPLE-HCMのデータが発表

  • aficamtenが標準治療薬であるβ遮断薬メトプロロールを上回る有効性を検証
  • 主要評価項目は事前規定された全てのサブグループで一貫性を示す
  • バイエルと米国Cytokinetics社の提携に基づき開発中

大阪、2026年3月23日 ― バイエル薬品株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:アシュラフ・アルオウフ、以下「バイエル薬品」)は、肥大型心筋症に対する治療薬として開発中の心筋ミオシン阻害剤aficamtenについて、症候性閉塞性肥大型心筋症患者を対象とした海外第Ⅲ相臨床試験MAPLE-HCMの結果が、3月20日~22日に福岡市で開かれた第90回日本循環器学会学術集会で発表されたことをお知らせします。

 

aficamtenは、心筋の過収縮を抑制することにより、肥大型心筋症の根本的な病態生理に作用する心筋ミオシン阻害剤です。aficamtenは米国Cytokinetics社により創製され、バイエルと同社が日本におけるaficamtenの開発および商業化に関する独占的提携およびライセンス契約を締結しています。また、症候性閉塞性肥大型心筋症に対する治療は、β遮断薬が第一選択薬として60年近く用いられてきましたが、エビデンスが限られていることが課題となっています。

 

MAPLE-HCM試験は、症候性閉塞性肥大型心筋症患者を対象に、aficamtenとβ遮断薬メトプロロールを比較した無作為化、二重盲検、実薬対照、第Ⅲ相臨床試験です。本試験では被験者175人がaficamtenまたはメトプロロールの各単剤療法に1対1の割合で無作為割り付けされ、有効性と安全性が検討されました。

 

同試験の主要評価項目である投与24週後の最大酸素摂取量のベースラインからの平均変化量は、aficamten群が+1.1mL/kg/min(95%CI:0.5~1.7)、メトプロロール群が-1.2mL/kg/min(95%CI:-1.7~-0.8)で、統計学的有意差を認めました[最小二乗平均(LSM):2.3mL/kg/min(95%CI:1.5~3.1、p<0.0001)]。aficamtenの最大酸素摂取量に対する効果は、新規診断または未治療の患者を含む、事前規定されたすべてのサブグループで一貫していました。また、aficamtenは6つの副次評価項目のうち5つにおいて、メトプロロールに対して統計学的有意差を示しました。

 

同試験における有害事象の発現率は両群で同程度であり、重篤な有害事象はaficamten群7人(8.0%)、メトプロロール群6人(6.9%)でした。全体として、aficamtenによる治療の忍容性は良好と考えられました。

 

同試験の結果より、aficamtenが承認されれば、同剤による単剤療法が閉塞性肥大型心筋症に対する第一選択薬となる可能性が示されました。同試験結果は、医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されています1

 

バイエルは、満たされていない医療ニーズの高い循環器領域に対して革新的治療のポートフォリオの強化に注力しています。バイエル薬品はCytokinetics社との連携を通じ、aficamtenを日本の患者さんにお届けするとともに、患者さんの日常生活の質の向上に貢献できるよう取り組んでいきます。

【aficamtenについて】

aficamtenは、心筋ミオシンに対する可逆的なアロステリック阻害剤です。肥大型心筋症患者において、aficamtenはミオシンを阻害することにより、心筋収縮力を低下させ、左室流出路の閉塞を軽減します。aficamtenは、予測可能な曝露反応と迅速な作用発現および可逆性を実現できるようデザインされています2

 

aficamtenは、米国、欧州、中国で閉塞性肥大型心筋症の治療薬として承認されています。日本国内ではバイエル薬品が、Cytokinetics社とバイエルとの共同開発計画に基づき開発を進めています。本計画によりバイエル薬品は、閉塞性肥大型心筋症の日本人患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施しています。また、Cytokinetics社は、非閉塞性肥大型心筋症患者を対象に実施中の国際共同第Ⅲ相臨床試験ACACIA-HCM、および閉塞性肥大型心筋症の小児患者を対象に実施中の臨床試験CEDAR-HCMを日本に拡大し、日本でバイエル薬品によるaficamtenの承認取得を支援します。 

 

【肥大型心筋症について】

肥大型心筋症は、心筋が異常に厚くなる(肥大する)病気です。心筋が肥大すると、左心室の内腔が小さく硬くなり、左心室が弛緩して血液を充満する能力が低下します。これにより最終的に心臓のポンプ機能が制限され、運動耐容能の低下や運動中の胸痛、めまい、息切れ、失神などの症状が現れます。閉塞性肥大型心筋症は心筋の肥厚により左室流出路が閉塞している一方、非閉塞性肥大型心筋症は血流には影響がないものの、心筋が肥厚しています。肥大型心筋症患者は、心房細動、脳卒中、僧帽弁疾患などの心血管系合併症を発症するリスクも高くなります。肥大型心筋症患者は、致死性心室不整脈の発症リスクがあり、若年者やスポーツ選手の突然死の主な原因の一つとなっています。肥大型心筋症患者の一部は、拡張型心筋症や心不全へと進行し、心臓移植が必要となるリスクが高くなります。

 

肥大型心筋症は、日本では難病指定されています。難病認定を受けた患者さんを対象とする2023年度の医療受給者証所持者数は4,388人とされていますが、心エコー検査によるスクリーニングでは、一般人口の500人に1人に認められるとの報告もあります3

References:

1. Garcia-Pavia, P, et al. Aficamten or Metoprolol Monotherapy for Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy. N Engl J Med. 2025; 393:949-960
2. Hartman JJ, Hwee DT, Roebrt-Paganin J, et al. Aficamten is a small-molecule cardiac myosin inhibitor designed to treat hypertrophic cardiomyopathy. Nat Cardiovasc Res. 2024;3(8) :1003-1016. doi:10.1038/s44161-024-00505-0
3. 難病情報センターホームページ(2026年3月現在)から引用、一部改変

循環器疾患におけるバイエルのコミットメントについて

バイエルは循環器領域のリーダーであり、アンメットメディカルニーズの高い循環器疾患の革新的な治療薬のポートフォリオを推進しています。当社は、循環器疾患(脳卒中、心不全、心筋症、慢性腎臓病など)の治療に向けた革新的な治療薬の開発に明確な焦点を当てており、これらの疾患を持つ患者さんのケアにおいて主導的な役割を果たすことを目指しています。バイエルのポートフォリオを心臓病に対する精密医療へと転換させ、循環器疾患による大きな負担に対処して長期的な成長を促進することにより、今後の循環器市場における未来を切り開くことを戦略としています。バイエルのポートフォリオには、革新的な製品や前臨床および臨床開発のさまざまな段階にある複数の化合物がすでに含まれています。

 

バイエルについて

バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。2025年のグループ全体の売上高は456億ユーロ、従業員数は約88,000名、研究開発費は58億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。

 

バイエル薬品株式会社について

医療用医薬品、コンシューマーヘルスの各事業を通じて、日本の患者さんのための治療に変革をもたらす持続可能な取り組みを推進しています。医療用医薬品部門では、アンメットメディカルニーズの高い循環器・腎・代謝領域、オンコロジー領域、眼科領域などのスペシャリティ領域、画像診断領域にフォーカスし、革新的医薬品の提供を通じて高齢化が進む日本の患者さんの健康寿命の延伸とQOLの向上に努めています。コンシューマーヘルス部門では、赤ちゃんの「人生最初の1000日」に適切な栄養を届けるため、女性の妊娠前から妊娠期間及び産後・授乳期を通じて栄養をサポートするサプリメントなどに注力しています。詳細はwww.pharma.bayer.jp, Facebook, YouTubeをご参照ください。

 

Cytokinetics社について

Cytokinetics社は循環器領域に特化したバイオ製薬企業であり、筋生物学における25年以上の先駆的な科学的イノベーションを基盤に、心筋機能障害をもつ患者さんのために薬剤候補の創製、開発、商業化に重点的に取り組んでいます。Cytokinetics社の心筋ミオシン阻害剤MYQORZO™(aficamten)は、成人症候性閉塞性肥大型心筋症患者に対する治療薬として、米国、欧州、中国で承認されています。aficamtenは非閉塞性肥大型心筋症の治療可能性についても研究が進められています。また、Cytokinetics社は、左室駆出率の低下した心不全患者を対象に心筋活性化剤omecamtiv mecarbil、左室駆出率の保たれた心不全の治療薬候補としてulacamtenの開発も行っており、同時に筋生物学における前臨床研究および開発も引き続き取り組んでいます。Cytokinetics社の詳細は、www.cytokinetics.comをご参照ください。

バイエル薬品株式会社
2026年3月23日、大阪

将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)

このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements) が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。